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9月30日、社会学者の内田良さんがYahoo!ニュース個人で掲載した記事「10段の組体操 崩壊の瞬間と衝撃」が、大きな波紋を投げかけた。これまでにも内田氏は組み体操の危険性を幾度も伝えていたが、それにもかかわらず学校の体育祭で事故が起きてしまったのである。
今回の内田氏の記事がそれまでに増してインパクトがあったのは、そこにYouTubeの事故映像へのリンクが貼 られていたからだ。それは極めて衝撃的な映像だ。100人以上で10段に積み重なった6~7メートルの高さの人間ピラミッドが、一瞬のうちに崩れ落ちる。 さらにその後、ひとりの生徒が教員に連れられて退場していく。その生徒の右腕は、おかしな方向に曲がっている。それがひどい骨折であることは、この映像で すでにわかっていた。
https://www.youtube.com/watch?v=RZuz8vcCN2s
すでに報道でも指摘されているように、組み体操での事故はとても多い。2013年度では、全国の小・中・高であわせて約8500件も起きている。このとき内田良氏が著書『教育という病』などで指摘する問題は、大きくわけて3つある。
ひとつが、事故発生件数の多さだ。組み体操の事故発生件数は跳び箱、バスケットボールに次ぐ多さである。
次に、頭部や頚部、腰部など重大な怪我や障害に繋がる可能性の高い部位での怪我が多いのも特徴だ。跳び箱やバスケットボールで多いのは指や手首などの怪我だが、頭や首、腰の怪我は組み体操が有意に多い。
もうひとつが、組み体操は文科省の学習指導要領に掲載されていない、学校独自の取り組みだという点だ。よって、そもそも組み体操が行われて いる期間や学校は限られている。今回の事故のように、その多くは体育祭(運動会)やその練習ために行われる。昨今の巨大ピラミッドなどは、これまでのソー ラン節に取って代わるブームになっているそうだ。すべての学校で行われていないにもかかわらず事故件数が多いということは、つまり事故率が極めて高いこと を示唆している。
一方、こうした組み体操を積極的に推進する教員も多い。内田氏の同前書によると、その中心にあるのは、大阪教育大学付属池田小学校に事務局を構える関西体育授業研究会だ。2011年に発行されたその研究通信では、「上から児童が降ってくると、逃げ場がないので、数人を巻き込んだ大きな事故になる恐れがあります。過去に一度に4人骨折という事故もありました」と、その危険性を十分に認識していることがわかる(※1)。
しかしそれでもなお、巨大な人間ピラミッドは拡がっていった。そこには教員たちの強い思いがある。同じく関西体育授業研究会の会報には、こうした言葉が並んでいる。
組体を通して子どもたちに学ばせたいことが
あります。
・一生懸命に取り組むこと
・仲間を信頼すること
・苦しさつらさを乗り越えること
それらはこれから先、子どもたちが生きていくうえで必ず身につけておいてほしいことです。
本番まで短い練習期間の中、毎回目標をもって組体に取り組む。そのことが単なる技の
完成ではなく、人としての完成を促すこととなるのです。
技だけでなく心を鍛える。
それが組体です。
年々、高層化・巨大化する人間ピラミッドでは、 ひとりのキーパーソンがいる。それが兵庫県伊丹市立南中学校に勤務する吉野義郎教諭だ。吉野教諭は過去の勤務校で1990年に10段ピラミッドを成功さ せ、2011、12年には11段に取り組んで失敗したと話している(※2)。
吉野教諭は、自らが制作した人間ピラミッドの映像をYouTubeなどで発信するなど、その啓蒙活動にもとても 熱心だ(※3)。仕事をしながら兵庫教育大学大学院に通って組み体操を研究し、動画にも「危ないので、安易に、まねをしないで」と付記している(※4)。 ということは、今回の中学校の事故は、安易に真似をしたということになる。
なお、内田氏の計算によると、10段ピラミッドにおいてもっとも負荷がかかる生徒は、ひとりあたり3.9人分だ という。中学生で言えば190~210キロ、高校生だと240キロほどの重量をひとりで支えることになるそうだ。吉野教諭は大学院でここまでのことをちゃ んと勉強し、荷重計算したのだろうか。
また吉野教諭は11段ピラミッドに挑戦して失敗している。しかも2年連続だ。彼が本当にちゃんと大学院で学んだのであれば、荷重計算をちゃ んとして綿密にピラミッドを組み上げたはずだ。それでなぜ失敗するのだろうか。吉野教諭には、こうした事態についての明確な説明が必要とされる。
筆者は、体育祭の組み体操事故で大怪我を負ったひとりに接触し、話を訊いてみた。
39歳の男性・Sさんが事故に遭ったのは、25年前の1990年のこと。当時、福岡県の公立中学2年生だったSさんは、3段タワーの最上部から落下し、左上腕部を骨折した。即日手術を受け、一ヶ月も入院することになったという。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/katoyoriko/20160224-00054537/
加藤順子
http://bylines.news.yahoo.co.jp/katoyoriko/
事故に遭った生徒は、東京都北区の小学6年生だった2014年5月、組体操の練習中に崩壊したタワーの下敷きとなった。左腕に広範囲な大けがを負 い、中学1年になった現在も後遺症に苦しむ。学校は、母親の求めに応じて担任が事故当時のタワーと教職員の配置を図示した文書を被害児童を通じて手渡した だけで、被害者や保護者に対して事故当時の説明を直接行わなかった。
保護者がせめてもとの思いで、保護者会で事故について報告するよう学校に求めると、学校は保護者会で実際の事実とは異なる内容を説明した。 校長が区教委に提出した事故報告書にも、事実と違う記載が複数見つかった。こうした事態に不信感を抱いた母親が都教委や区教委に助けを求めると、「学校か らの報告が全て」として、担当者は取り合おうとしなかった。
事故直後から学校や教育行政の対応をつぶさに見てきた被害生徒の手紙は17日、議連を通じて馳文科相側に渡された。鉛筆や消しゴムを長く持ち続けることが できない腕で書かれた手紙の内容は、学校側に事故の実態を隠蔽されたことに対する怒りや、地方教育行政上、学校設置者に対して「中止」の指示や指導を明言 できない国の態度に対して、子どもながらの疑念が込められている。
以下は、組体操事故で大けがを負った生徒がつづった馳文科相への手紙。
はじめまして。突然のお手紙ですみません。
私は2014年5月12日(月) 小学校6年生の体育の授業で運動会で行う組み体操の4段タワーの練習をしていました。
先生が 絆だから!絆なんだよ! これは●小学校の伝統なんだよ! と言っていました。
しかし練習中に事故が起きました。
私は4段タワーの最下段で四つん這いになっていました。上から2段目と最上階が一緒に立ち上がろうとした時、3段目も一緒にバランスを崩しタワーが崩壊して私の体に上からドワーっと落ちてきました。
急に体にものすごい重圧がかかってきてその時死ぬかと思いました。すっごく怖かったです。
体を動かす事が出来なくて力が入らなくて、今までに感じた事のない痛みが全身にきて息をするのも辛かったです。私は悲鳴をあげてしまいました。あの時の恐怖は今も覚えています。
私は左手首靱帯損傷、左肘の脱臼、骨折をしました。
手術室に入る前の不安や恐怖から大泣きしました。手術が終わって説明出来ないくらいの痛みがきました。そんな痛みをもう誰にもさせたくないです。あの苦しみや痛みをこれ以上誰かがしなくてすむようにして下さい。
生まれて初めての手術と入院、痛みや不安や恐怖。事故の場所から私や家族の人生も変わってしまいました。受験を予定していましたが、それも出来る状態ではなくなりました。
小学校生活、最後の楽しい思い出つくりは何もありませんでした。
音楽鑑賞会、ミュージカル、遠足、修学旅行、プール、バレーボール…。全て失いました。
たくさんの普通に出来ていた事が出来なくなる苦しみがわかりますか?!
食事や着替え、トイレやお風呂、鉛筆を持ってノートに書く、消しゴムで消す事が出来ない。
普通に毎日やっていた事が授業が生活が出来なくなる苦しみがわかりますか?!
卒業までに3回の手術をしました。母が卒業証書は右手だけで受け取れるようにと一緒に練習してくれました。本当に辛い毎日でした。
でも、あの時、事故にあったのが私だけでよかった。と思いました。
今も、いつくるかわからない痛みにたえる日々を過ごしています。傷も一生残ります。母に五体満足に生んでもらったのにひどいです。
事故の時、体育館で担任の先生や校長先生につかれた嘘。信じられません。
体育館の床に倒れたまま聞きたくなかったです。
そこまで事故を隠し守ってでもやる組み体操の意味は何ですか?
やる意味は伝統という言い訳だけだと思います。
学校で守るのは私達子供の命だと思います。
事故の数だけ子供達被害者がいます。これ以上被害者を増やさないで下さい。
学校は同じ過ちを繰り返さないでほしい。
無責任な対応をしてきたから、たくさんの被害者が出ました。その被害者の数だけ未来を将来の夢やたくさんの可能性を学校の先生が私たちからうばってきたわけです。
一人でも事故がおきたら国が直ぐ危険な事です。と、対応をしてくれていたらと残念におもいます。
組み体操を続けるならこれからは責任を国がとってくれるのですか?
無責任な検討はしないで下さい。組み体操は学校でやらなくていいことなので種目を変えて下さい。
行進なら日本体育大学の人たちもやっていてすごいです。
中学入学前、中学の校長先生から「体育の授業で実技はやらないと点数は0点です。」と言われました。酷いです。
私だってやりたくても出来ないのに…。
時間を元に戻してほしい!
私の心の傷と体の傷は一生もって生きていきます。
この国は私達子供に対してこれからも酷い国でありつづけるのでしょうか?
今の日本は思いやりのない国だと思います。
(●は学校名。一部の改行は筆者が掲載にあたり調整した)
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大臣に直訴したのは良い選択だ。
教師が一般の感覚とズレているのは社会経験がゼロだから。
「9段」ピラミッドの中学校では、たんに巨大であるだけではなく、頂点の生徒は、頂点から垂れ幕を下ろすという作業もこなした。じつは、昨年度「10段」ピラミッドが崩壊して6名の負傷者を出した中学校でも、頂点の生徒は垂れ幕を腰に付けてのぼっていた。 ただでさえ高層化していてリスクが高いところに、さらに頂点の生徒が新たなパフォーマンスをおこない、組体操に華を添えようというのだ。
この春の運動会で、私が驚いたのは、俵型のピラミッドで「7段」を記録した学校があったということだ。
俵型の7段では、一人にかかる最大負荷は、3.81人分、おおよそ立体型ピラミッドの「10段」に相当する。中学3年生男子の場合、平均体重は54.0kg(文部科学省調査)であるから、最大負荷は205.7kgにまで達する[注2]。動画を見てみると、ピラミッドが崩れないよう、両横から複数の教員が生徒の身体を押し込めている様子が映っている。
「生徒がやりたがっている」「保護者からの期待も大きい」「わが校の伝統」「教育的意義が大きい」・・・ それらのポジティブな側面は理解できる。だが、そもそも巨大組体操は、負荷量や高さの面で、安全指導の範疇を超えてしまっている。
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教師の身分は保証されており、個人に責任は無い。